販路開拓や生産性向上を目指す小規模事業者にとって、返済不要の「小規模事業者持続化補助金」は非常に心強い味方です。しかし、「手続きが複雑そう」「どうすれば採択されるのか分からない」といった不安を感じる方も多いのではないでしょうか?
この記事では、最新情報に基づき、小規模事業者持続化補助金の制度概要から、採択率を上げるための申請書の書き方、具体的な成功事例までを、初心者の方にも分かりやすく徹底解説します。
この記事でわかること
- 自分が補助金の対象になるかが分かる
- 補助対象となる経費とならない経費が分かる
- 申請から入金までの具体的な流れが分かる
- 採択されやすい事業計画書のポイントが分かる
- 最新の申請スケジュールと相談先が分かる
1. 小規模事業者持続化補助金とは?
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が自社の経営計画に基づいて行う販路開拓や生産性向上の取り組みに対し、国が経費の一部を補助する制度です。事業の持続的な成長を後押しすることを目的としています。
補助金の基本情報
項目 | 内容 |
目的 | 販路開拓、業務効率化・生産性向上 |
補助率 | 補助対象経費の原則2/3以内 |
補助上限額 | 50万円~200万円(申請枠により異なる) |
特徴 | ・商工会・商工会議所のサポートを受けられる ・返済不要 |
注意点 | 後払い方式(事業実施後に経費を支払い、報告後に補助金が入金される) |
あなたは対象?補助対象となる「小規模事業者」の定義
この補助金を申請するには、下記の従業員数を満たす「小規模事業者」である必要があります。
業種 | 常時使用する従業員数 |
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) | 5人以下 |
宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
製造業・建設業・運輸業 その他 | 20人以下 |
※役員や個人事業主本人、一定の条件を満たすパートタイム労働者は従業員数に含みません。
2. 【2025年最新】申請枠の種類と補助上限額
本補助金には複数の申請枠があり、それぞれ上限額や要件が異なります。自社の状況に最も適した枠を選択することが重要です。
申請枠 | 補助上限額 | 補助率 | 主な要件 | こんな事業者におすすめ |
通常枠 | 50万円 | 2/3 | すべての小規模事業者 | まずは販路開拓の第一歩を踏み出したい事業者 |
賃金引上げ枠 | 200万円 | 2/3 | 事業場内最低賃金を+30円以上引き上げる | 従業員の待遇改善と事業拡大を両立したい事業者 |
卒業枠 | 200万円 | 2/3 | 常時使用する従業員数を増やし、小規模事業者を卒業する | 規模拡大を目指し、積極的に雇用を増やしたい事業者 |
後継者支援枠 | 200万円 | 2/3 | 代表者が60歳以上で、後継者候補が事業承継を行う | 事業承継を機に、新たな取り組みに挑戦したい事業者 |
創業枠 | 200万円 | 2/3 | 産業競争力強化法に基づく認定を受けた創業者 | 創業期に販路開拓を加速させたいスタートアップ |
※上記に加え、インボイス発行事業者になる事業者に対して補助上限額が上乗せされる「インボイス特例」が設けられる場合があります。
3. 何に使える?補助対象となる経費・ならない経費
補助金は、販路開拓や生産性向上に繋がる幅広い経費に活用できます。
補助対象経費の具体例
経費区分 | 具体的な活用例 |
① 機械装置等費 | ・新メニュー開発用の厨房機器導入 ・業務効率化のための会計ソフト導入 |
② 広報費 | ・集客のためのWebサイト制作、リニューアル ・チラシ、パンフレット、看板の作成 |
③ 展示会等出展費 | ・国内外の見本市への出展料、関連経費 |
④ 旅費 | ・販路開拓のための国内・海外出張費(交通費・宿泊費) |
⑤ 開発費 | ・新商品の試作品開発 ・新サービスのパッケージデザイン費用 |
⑥ 資料購入費 | ・事業遂行に不可欠な専門書や資料の購入 |
⑦ 雑役務費 | ・販路開拓のための臨時アルバイト雇用費 |
⑧ 借料 | ・事業遂行に必要な機器のリース、レンタル料 |
⑨ 設備処分費 | ・新設備導入に伴う、旧設備の解体・処分費用 |
⑩ 委託・外注費 | ・Webサイト制作やデザインなどを外部専門業者へ依頼する費用 |
4. 申請から入金までの完全ロードマップ
申請手続きは計画的に進めることが成功の鍵です。特にGビズIDの取得には時間がかかるため、早めに準備を始めましょう。
【申請から入金までの流れ】
- 【準備】商工会・商工会議所へ相談
- 事業計画について相談し、サポートを受けます。
- 【準備】GビズIDプライムの取得
- 電子申請に必須のアカウントです。取得に2~3週間かかるため、公募開始前から準備しましょう。
- 【作成】申請書類の作成
- 最も重要な「経営計画書」と「補助事業計画書」を作成します。
- 【作成】事業支援計画書(様式4)の発行依頼
- 作成した計画書を商工会・商工会議所に提出し、支援機関としての確認書を発行してもらいます。
- 【申請】電子申請システム(Jグランツ)で提出
- 全ての書類を準備し、期限内に電子申請システムで提出します。
- 【審査】採択結果の発表(締切から約2~3ヶ月後)
- 事務局による審査が行われ、採択者が公式サイトで発表されます。
- 【事業実施】交付決定後、補助事業を開始
- 交付決定通知書を受け取ってから、計画した取り組み(発注・契約・支払い)を開始します。※交付決定前の支出は補助対象外です。
- 【報告】実績報告書の提出
- 事業完了後、期限内に経費の証拠書類(領収書など)を添えて実績を報告します。
- 【入金】補助金の確定・支払い
- 報告内容が検査され、補助金額が確定した後、指定の口座に振り込まれます。
2025年 申請スケジュール(目安)
補助金は年に複数回公募が実施されるのが通例です。最新情報は公式サイトで必ず確認してください。
公募回 | 申請受付締切(目安) | 採択結果発表(目安) |
第1回 | 2025年 5月下旬 | 2025年 8月頃 |
第2回 | 2025年 8月下旬 | 2025年 11月頃 |
第3回 | 2025年 11月下旬 | 2026年 2月頃 |
第4回 | 2026年 2月下旬 | 2026年 5月頃 |
公募情報の確認先
- 中小企業庁
- 全国商工会連合会(商工会地区の方)
- 日本商工会議所(商工会議所地区の方)
5. 【最重要】採択率を上げる!経営計画書の書き方3つのコツ
採択されるか否かは、説得力のある「経営計画書」と「補助事業計画書」を作成できるかにかかっています。以下の3つのポイントを意識しましょう。
コツ1:自社の強みと課題を明確にする
審査員に「この事業者は自社のことをよく理解している」と思わせることが重要です。
- 自社の強み: 競合他社にはない独自の技術、顧客との深い関係性、立地の良さなど。
- 課題: 顧客層の高齢化、新規顧客の獲得不足、SNSでの発信力不足など。
- 機会・脅威: インバウンド需要の回復(機会)、原材料価格の高騰(脅威)など。
コツ2:具体的で測定可能な目標を立てる
「頑張ります」「売上を上げます」といった曖昧な表現はNGです。誰が読んでも分かる具体的な数値目標を設定しましょう。
- 悪い例: 新しい顧客を増やして、売上を向上させる。
- 良い例: 若年層をターゲットにした新商品(〇〇)を開発し、Instagram広告を活用して、半年後までに新規顧客を50人獲得し、月間売上を10万円増加させる。
コツ3:「課題→解決策→未来」の一貫したストーリーを描く
補助金を活用して、自社の課題をどう解決し、どのような未来を実現したいのか、一貫したストーリーで語ることが説得力を生みます。
- 【課題】 長年の常連客に支えられているが、新規顧客が少なく売上が頭打ち。
- 【解決策(補助金活用)】 若者向けにテイクアウト専用の新メニューを開発(開発費)。Instagramで見栄えのする写真を投稿し、Webサイトにオンライン注文システムを導入する(広報費、委託費)。
- 【未来】 新たな顧客層を獲得し、売上が10%向上。地域の新たなランドマークとなる。
6. 分野別!補助金活用成功事例
あなたのビジネスのヒントになる成功事例をまとめました。
業種 | 抱えていた課題 | 補助金を活用した取り組み | 達成した成果 |
飲食店 | コロナ禍での売上減少、新規顧客の不足 | ・テイクアウト用メニュー開発 ・オンライン注文サイトの構築 ・グルメサイトへの広告出稿 | ・テイクアウト売上が全体の30%を占めるまでに成長 ・新たな顧客層(ファミリー層)の獲得に成功 |
製造業 | 旧式設備の生産効率の低下、不良品率の高さ | ・最新の加工機械を導入 ・作業工程を見直し、品質管理システムを構築 | ・生産性が20%向上 ・不良品率が半減し、利益率が改善 |
小売業 | 来店客数の減少、商圏の限定 | ・ECサイト(オンラインショップ)の構築 ・商品の魅力を伝える写真撮影とSNSでの発信 ・キャッシュレス決済の導入 | ・オンライン売上が全体の40%に到達 ・全国に新たな顧客を獲得 |
7. よくある質問(FAQ)
Q1: 個人事業主でも申請できますか? A1: はい、申請可能です。ただし、商工会・商工会議所の管轄区域内で事業を営み、従業員数などの要件を満たす必要があります。
Q2: 過去に採択された場合でも、再度申請できますか? A2: はい、再申請可能です。ただし、前回の補助事業を完了させ、実績報告を終えていることが条件です。
Q3: 補助金はいつもらえますか? A3: 後払いです。補助事業を完了し、経費の支払いを全て終えた後、実績報告書を提出します。その内容が審査され、補助金額が確定した後に振り込まれます(実績報告から約1~2ヶ月後)。
Q4: パソコンやプリンターの購入は対象になりますか? A4: いいえ、パソコンやプリンターなど、他の目的にも使用できる汎用品の購入費用は原則として補助対象外です。
Q5: 申請書類の作成が難しいです。どうすれば良いですか? A5: まずは管轄の商工会・商工会議所に相談しましょう。無料で計画書の作成支援を受けられます。より専門的なサポートが必要な場合は、中小企業診断士などの専門家に依頼することも有効です。
8. まとめ:今すぐ行動を起こし、ビジネスを加速させよう
小規模事業者持続化補助金は、あなたのビジネスを次のステージへ押し上げる強力なツールです。
ファーストステップ
- 最寄りの商工会・商工会議所に電話して相談予約をする。
- GビズIDの公式サイトでアカウント取得の準備を始める。
- 自社の課題と、補助金で実現したいことを書き出してみる。

競合他社に差をつけ、持続可能な成長を実現するために、この貴重な機会を最大限に活用しましょう。まずは第一歩として、地域の商工会・商工会議所への相談から始めてみてください。
免責事項 本記事の情報は2025年9月時点の一般的な情報に基づいて作成されています。公募回によって要件やスケジュールが変更される場合があります。申請にあたっては、必ず中小企業庁や各商工会・商工会議所が発表する最新の公募要領をご確認ください。
参考URL: 中小企業庁