「優れた製品やサービスを作りさえすれば、自然とお客様は集まってくる」
私も起業当初はそう思っていました。実際には違いました。素晴らしい製品も、知ってもらえなければ意味がないんです。でも安心してください。私が全国のスタートアップを見てきた経験から、限られたリソースでも効果的な広報戦略をご紹介します。
なぜ起業初期にPR戦略が必要なのか?
「広告を出す予算がないから…」という声をよく聞きます。でも実はPRと広告は根本的に違うんです。
広告は「自分で自分を褒める」行為。一方、PRは「他者に褒めてもらう」戦略です。私が支援したある飲食系スタートアップでは、広告費ゼロでも地元メディアの取材をきっかけに口コミが広がり、オープン初日から行列ができました。
限られた資金の中では、広告よりもPRの方が効果的なケースが圧倒的に多いんです。なぜなら:
- 信頼性が段違い:自分で言うより第三者が言うほうが説得力があります
- 持続効果が長い:良質な記事は何年も検索結果に残ります
- 費用対効果が高い:同じ予算なら、PRの方が長期的な影響力が大きいです
特に資金調達や人材採用に苦戦している場合、PR戦略は即効性がある解決策になります。投資家もいい人材も、まずあなたの会社を「知る」ところから始まるからです。
起業初期PR戦略の現状と誤解されがちなポイント
私がよく見かけるのは、「日経新聞に載れば売上が急増する!」という幻想です。実際に私のクライアントで全国紙に大きく取り上げられたスタートアップも、一時的な問い合わせ増加はあったものの、継続的な成果につながったのは別の要因でした。
PR戦略の本質は、「最初の熱狂的な100人のファン」を見つけることなんです。
小さな専門メディアでも、ターゲット層に刺さる記事1本の方が、大手一般メディアの流し読みされる記事より価値があります。あるテック系スタートアップでは、業界特化型のオンラインメディア1社への掲載が、有力投資家からの問い合わせにつながりました。
プレスリリースも「出して終わり」ではなく、「関係構築の入口」と考えましょう。記者さんとの良好な関係が次の取材につながるんです。私自身、月1回程度メディア関係者と食事する習慣をつけていますが、そこから生まれた記事が最も反響が大きかったりします。
起業初期にやるべきPR戦略:成功のための5ステップ
ステップ1:PRの目的を明確にする
「何のためのPR活動なのか?」この問いに答えられないと効果は出ません。
ある教育系スタートアップの例で説明しましょう。最初は「認知度を上げたい」という漠然とした目標でしたが、具体的に「学校現場の先生100人にサービスを知ってもらい、10校での実証実験を実現する」と設定し直したところ、教育専門誌への寄稿という明確な戦略が見えてきました。
PR活動の目的は主に以下の4つです:
- ブランド認知度の向上
- 新規顧客の獲得
- 投資家へのアピール
- 採用強化
この中から、今の自分たちに最も必要なものを1〜2つ選びましょう。「全部」は無理です。私も全方位的なPRを試みて失敗した経験があります。集中こそ成功の鍵なんです。
ステップ2:ターゲット顧客を明確に定義する
「誰に届けたいか」を明確にしないPR活動は、闇に向かって叫ぶようなもの。誰にも届きません。
私がコンサルした美容系アプリの例では、当初「20〜40代女性」とターゲット設定していましたが、これでは広すぎます。「30代前半・子育て中・時間に追われる・美容に投資したいけど salon に行く時間がない」と具体化したところ、SNS投稿の内容が劇的に変わり、エンゲージメント率が3倍に跳ね上がりました。
ペルソナ設定では、「表面的な属性」より「内面的な課題」が重要です。「30歳女性会社員」より「美容に投資したいが時間がない」の方が、メッセージ設計の助けになります。
ステップ3:自社の強みと価値を明確にする
「他社ではなく、なぜあなたなのか」を明確に説明できますか?
技術系スタートアップなら「特許技術」「解析速度2倍」などの具体的数値、サービス系なら「顧客満足度98%」「継続率95%」などの実績が説得力を持ちます。
私が支援したあるフードテックベンチャーでは、「サステナブルな食品」という抽象的な説明より、「食品ロスを従来比80%削減できる製造技術」という具体的な強みを前面に出したところ、メディアの取材が増えました。
差別化ポイントは、競合と比較し「唯一」「初めて」「最も」と言えるものを探しましょう。それがPRの核になります。
ステップ4:ストーリーテリングを活用する
数字やスペックだけでは人の心は動きません。感情を揺さぶるストーリーが必要です。
創業者の「なぜこの事業を始めたのか」という原体験には大きな力があります。私自身、プレゼンで自分の失敗談を交えた時の方が、圧倒的に反応が良いのを実感しています。
ストーリーには主に3つのパターンがあります:
- 創業ストーリー:「こんな問題を自分が経験して、解決策を作った」
- 顧客成功ストーリー:「お客様がこんな課題を抱えていて、こう解決した」
- 製品開発ストーリー:「こんな困難があったが、試行錯誤の末に実現した」
どれも「困難→挑戦→成長」の構造を持つと効果的です。サクセスストーリーより、苦労話の方が共感されるのが人間心理です。
ステップ5:最適なPR手法を選択する
ようやく具体的な手法です。ここまで準備してからでないと、どんな手法も効果が薄まります。
私のクライアントには「まずはプレスリリースを出しましょう」と言う広報会社もありましたが、最初にすべきはメディア掲載とは限りません。例えば:
- 初期ユーザー獲得が目的なら → SNS発信から始める
- 投資家向けアピールが目的なら → 専門メディア取材を狙う
- 認知拡大が目的なら → プレスリリース配信が効果的
- コミュニティ形成が目的なら → 自社イベント開催から
最初から大きな成果を期待せず、小さく始めて成功体験を積み重ねましょう。私も初めてのプレスリリースは全く反響がありませんでしたが、諦めずに続けたことで今があります。
起業初期PR戦略:具体的な施策
プレスリリースの効果的な活用
プレスリリースは「記者に仕事を頼む書類」です。これだけで記事にすべき理由を明確に伝えましょう。
「何が」「なぜ」「どう」すごいのかが伝わらないプレスリリースは、記者のゴミ箱行きです。私も最初は自分視点のリリースばかり書いていましたが、「読者や社会にとっての価値」を強調するようになってから、掲載率が3割以上上がりました。
効果的なプレスリリースのコツは:
- 冒頭に「一番言いたいこと」を凝縮する
- 数字や具体例で裏付ける(「売上2倍」「顧客満足度98%」など)
- 業界の課題とその解決策を明確に示す
- 社会的な意義や将来展望も含める
配信先もただ配信サービスに流すだけでなく、最も報道してほしい3〜5社には直接メールで送付するなど、ひと手間かけると反応が違います。「担当記者さん、以前のXの記事に共感しました」など、一言添えるだけでも印象が変わります。
プレスリリース配信サービスとしては、PR TIMES や ValuePress! が使いやすいですよ。
SNSを活用した情報発信
SNSでよくある失敗は「全プラットフォームで同じ内容を投稿」すること。各SNSはそれぞれ特性が違います。
私の経験では、ターゲット別に最適なプラットフォームがあります:
- BtoBサービス:LinkedInでの専門的情報発信
- 若年層向け:InstagramやTikTokでビジュアル重視のコンテンツ
- 専門家向け:Xでの業界情報や分析の共有
- 主婦層向け:Instagramでの実用的なコンテンツ
ただ投稿するだけでなく「見込み顧客が検索しそうなキーワード」で検索して、関連投稿にコメントするのも効果的です。人のポストを10件コメントする方が、自分の投稿を10件するより効果が高いことも多いんですよ。
コンテンツは「セールストーク8割、有益情報2割」ではなく、逆の「有益情報8割、セールストーク2割」が効果的です。ある美容系クライアントでは、商品PRよりもスキンケアのコツや最新トレンド情報を中心に発信したところ、フォロワーの増加速度が4倍になりました。
メディアとの関係構築
記者は「良い情報源」を求めています。自社PR一辺倒ではなく、業界の専門家として情報を提供する姿勢が大切です。
例えば私が関わった金融系スタートアップでは、まずは業界全体のトレンドレポートを作成し、記者に「取材協力できます」と送ったところ、最初の記事では社名すら出ませんでしたが、その後の継続的な関係から自社サービスの特集記事につながりました。
メディアリレーションのコツは:
- 担当記者の過去記事に目を通し、関心領域を把握する
- 自社の話だけでなく、業界動向や背景知識も提供する
- 定期的に情報提供し、関係を継続する
- 取材対応は迅速・正確に
「記者は敵ではなくパートナー」という意識が大切です。急いでいる記者の締切に合わせて対応した経験は、後々大きな信頼関係になりました。
イベント・キャンペーンの実施
予算がなくても、小規模なオンラインイベントから始めることができます。私のクライアントでは、月1回のオンラインセミナーを続けるうちに、参加者からの紹介で顧客になるケースが増えました。
イベントの魅力は「顔の見える関係」が築けること。プロダクトだけでなく人に共感してもらえれば、長期的な関係につながります。
効果的なイベント例:
- 少人数制のユーザー座談会(15名程度)
- 業界有識者を招いたウェビナー
- サービス体験会やプロトタイプのフィードバックセッション
特に初期ユーザーからのフィードバックは、製品改善とPRの両方に役立ちます。フィードバックを積極的に取り入れた姿勢を見せれば、ユーザーはファンになってくれるのです。
インフルエンサーマーケティング
「フォロワー数の多さ」で選ぶと失敗します。重要なのは「ターゲット層とのフィット感」です。
アパレル系のクライアントでは、フォロワー10万人のインフルエンサーより、3万人でもコアなファンがいるインフルエンサーの方が、3倍以上の成約につながりました。
特に初期段階では、いわゆる「マイクロインフルエンサー」(フォロワー1万人以下)との協業が効果的です。彼らはコアなファンベースがあり、エンゲージメント率も高いからです。
インフルエンサー選定のポイント:
- 投稿内容と自社製品の親和性
- コメント欄の活発さ(単なる数字だけでなく)
- 過去の投稿の一貫性と信頼性
「一度きりの投稿」より「継続的な関係」を築く方が長期的な効果があります。製品だけでなく、ブランドの価値観に共感してくれるパートナーを見つけましょう。
口コミマーケティング
最も効果的なPRは「満足した顧客からの口コミ」です。
私が支援したあるSaaSスタートアップでは、初期顧客に徹底的に寄り添い、期待以上のサポートを提供したところ、紹介による新規顧客が全体の40%を占めるようになりました。
口コミを生み出す仕組みづくりのポイント:
- 顧客体験の最適化(期待を上回るサービス)
- 口コミを残しやすい導線設計(レビューページへの誘導など)
- 顧客の声を積極的に発信(SNSでの引用など)
- 紹介プログラムの設計(紹介者・被紹介者双方にメリット)
「口コミを頼む」だけでなく「口コミしたくなる体験」を作ることが本質です。私自身もあるサービスの魅力に感動して、人に薦めずにはいられなかった経験があります。それが本当の口コミの力です。
成功事例から学ぶ:ユニコーン企業のPR戦略
大企業のPR戦略をそのまま真似しても意味がありません。でも、彼らの「初期段階」の戦略には学ぶべき点が多くあります。
Airbnbのストーリーテリング戦略
Airbnbの創業者たちは、「家賃が払えず、自宅の一部を旅行者に貸し出したことがきっかけ」という創業ストーリーを徹底的に語りました。この「必要に迫られた発想」が共感を呼び、多くのホストを集めるきっかけになったのです。
ポイントは「自分たちの体験から生まれたサービス」という物語性。これが単なる「宿泊サービス」ではなく「旅のあり方を変える運動」という印象を与えました。
私も何度かAirbnbを利用しましたが、その体験は「ただの宿」を超えた価値がありました。創業ストーリーが実際の体験と一致していたからこそ、信頼性と共感が生まれたのです。
Uberの「既存市場への挑戦」メッセージ
Uberの初期PR戦略は「タクシー業界の問題点」を前面に出し、「都市の移動をもっと簡単にする」というビジョンを伝えました。
彼らのメッセージは「タクシーが捕まらないイライラ」という共通体験から始まり、「テクノロジーで解決する」という希望を提供しました。これが「変革者」というブランドイメージを確立したのです。
あなたのスタートアップも「業界の課題」と「提供する解決策」を明確に伝えられていますか?私が支援したあるフィンテックスタートアップでは、「銀行口座開設の煩わしさ」という課題を前面に出したところ、メディアの反応がぐっと良くなりました。
Slackの「ファーストユーザー体験」重視
Slackの成功は、初期ユーザーの「使ってみたら便利!」という声をPRに活用した点にあります。
彼らは自社PRよりも「実際にSlackを使った人の声」を中心にした広報戦略により、口コミで爆発的に成長しました。特に初期段階では、少数の熱心なユーザーの声を丁寧に拾い上げ、それをPRに活用していたのです。
私のクライアントでもSaaS系サービスは特に「初期ユーザーのフィードバック」を積極的に収集し、改善点だけでなく良かった点も広報に活用すると効果的でした。
共通するポイント:市場ではなく「人」に焦点を当てる
これらのユニコーン企業に共通するのは、初期段階で「市場規模」や「テクノロジー」ではなく、「人々の生活をどう変えるか」という視点でPRしていた点です。
技術的な優位性だけでなく、「使う人がどう感じるか」「どんな問題が解決されるか」という視点で語ると、メディアも読者も反応が違います。私自身、テック系のプレスリリースを「人間の物語」に書き換えただけで、掲載率が2倍になった経験があります。
あなたのビジネスも、「機能」ではなく「人生をどう変えるか」という視点でPRしてみてください。
よくある失敗とその対策
PR活動でよくある失敗パターンをいくつか紹介します。私自身も経験したことがあるものばかりなので、ぜひ参考にしてください。
失敗①:ターゲットが明確でないPR
「私たちのサービスは誰にでも便利です!」
これは最も多い失敗パターンです。私も最初はこの罠にはまりました。あるBtoBサービスで「中小企業から大企業まで幅広く」とアピールしたところ、記者からは「で、結局誰向けなの?」と突っ込まれたことがあります。
対策: 最初は狭いターゲットに絞り込む勇気を持ちましょう。例えば「20〜30代・都市部在住・独身・副業に興味がある会社員」のように具体化すると、メッセージが明確になります。同じ製品でも、ターゲットが変われば訴求ポイントも変わるんです。
ペルソナを作る際は、「困っていること」「日常的な情報源」「価値観」まで掘り下げると、より効果的なメッセージが作れます。
失敗②:一貫性のないメッセージ
今日はこのメッセージ、明日は別のメッセージ…と発信していると、結局何も記憶に残りません。
あるITスタートアップでは、プレスリリースでは「業務効率化」を謳い、SNSでは「働き方改革」、セミナーでは「コスト削減」と異なる切り口で発信していました。結果として「何をする会社?」というイメージが定着しませんでした。
対策: 核となる3つのメッセージを決め、すべての発信をそこに紐づけましょう。例えば「シンプルな操作性」「時間短縮効果」「専門知識不要」といった軸を決めておけば、発信内容がブレなくなります。
私自身、クライアントにはA4一枚の「メッセージシート」を作成し、それを基準に発信内容を整理することをおすすめしています。
失敗③:過剰な自社アピールによる信頼性低下
「世界初!」「業界最高!」といった大げさな表現には、記者もユーザーも敏感です。
あるテックスタートアップは「革命的なAI技術」と謳っていましたが、実態は既存技術の改良レベル。記者が技術検証してその点を指摘され、逆にネガティブな印象を植え付けてしまいました。
対策: 事実に基づく謙虚なアピールを心がけましょう。「世界最高」より「○○の課題を解決」という表現の方が信頼性が高いのです。数字や具体例で裏付けられた主張は、説得力が違います。
私は「自分で言いたくなる誇張表現は、他者に言ってもらう」という原則を大事にしています。お客様の声や第三者評価を上手に活用しましょう。
PR体制の構築:内製化 vs 外注
PR体制の構築方法には、主に3つの選択肢があります。資金状況やフェーズによって最適解は変わります。
創業者自身がPR担当を兼務するケース
多くのスタートアップは、この形で始めます。私も最初の2年間は自分でPRを担当していました。
メリット:
- コスト抑制できる(特に資金が限られている初期段階で重要)
- 自社のことを誰よりも理解している
- 意思決定が迅速
デメリット:
- 創業者の時間が分散される
- PR専門知識やノウハウが不足
- メディア人脈がない場合が多い
特に資金調達前の段階では、この形が現実的です。ただし「PR活動に割ける時間」を明確に確保することが重要です。私の場合は、毎週月曜の午前中を「PR活動の時間」と決めて、プレスリリース作成やメディアコンタクトを集中して行っていました。
PR担当者を採用するケース
シリーズAクラスの資金調達後に検討するケースが多いです。
メリット:
- 会社の理解と専門性を両立できる
- 一貫性のある発信が可能
- メディアとの関係構築に集中できる
デメリット:
- 人件費という固定コストがかかる
- 優秀なPR人材の採用が難しい
- 即戦力になるまで時間がかかる場合も
採用する場合は「広報経験者」よりも「自社の業界経験者」を優先すると良いでしょう。PR技術は教えられますが、業界理解は一朝一夕には身につきません。私のクライアントでも、元記者より業界経験者の方が成果を出すケースが多いです。
PR会社・コンサルタントを活用するケース
資金調達直前・直後や、大きな発表の際に検討されることが多いです。
メリット:
- 専門知識とメディア人脈をすぐに活用できる
- 客観的な視点でアドバイスを受けられる
- リソースの増減が柔軟
デメリット:
- 月額50万円~と費用がかかる(スポット契約も可能な場合あり)
- 自社理解に時間がかかる
- 他のクライアントも抱えているため、リソース分散の懸念
PR会社選びのポイントは「実績」より「相性」です。特に担当者との相性が重要で、「自社のビジョンに共感してくれるか」「長期的なパートナーになれそうか」を見極めましょう。私も一度、大手PR会社と契約しましたが、担当者との相性が悪く、成果が出なかった経験があります。
理想的なのはハイブリッド型
私がおすすめするのは、フェーズに応じたハイブリッド型です:
- 立ち上げ期: 創業者自身がPRを担当
- 成長初期: 重要な発表時にPRコンサルタントをスポットで活用
- 成長期: PR担当者を採用し、専門領域のみPR会社と協業
費用対効果を最大化するなら、PR会社に「丸投げ」せず、自社でできることと外部に依頼することを明確に分けると良いでしょう。例えば、プレスリリースの基本設計は自社で行い、ブラッシュアップとメディアアプローチのみ外部に依頼するなどの工夫ができます。
効果測定と改善:PRのKPI設定
PR活動は「良い感じ」や「なんとなく効果があった」では評価できません。きちんと数値化して効果測定することが大切です。
PRのKPI設定例
私がクライアントと設定するKPIは、目的によって異なります:
ブランド認知向上が目的の場合:
- メディア掲載数(月〇回以上)
- 掲載メディアの質(〇〇以上の規模のメディア)
- SNSフォロワー増加数(月〇%増)
- ブランド名の検索ボリューム(前月比〇%増)
顧客獲得が目的の場合:
- PR経由のウェブサイト訪問数
- お問い合わせ数(PR後の増加分)
- 資料ダウンロード数
- 実際の成約数・売上貢献
投資家向けアピールが目的の場合:
- 業界専門メディアでの掲載数
- 投資家からの問い合わせ数
- 経済メディアの掲載数
- ピッチ資料のダウンロード数
これらの指標を毎月チェックし、「何が効果があって、何が効果がなかったか」を検証することが重要です。私のあるクライアントは、3か月間のPR施策の効果測定から「テック系より経済系メディアの方が顧客獲得につながる」という発見があり、戦略を修正して成果を2倍にした例があります。
効果測定ツール
PR効果を測定するための便利なツールもあります:
- Google Analytics:PR施策と連動したトラフィック分析ができます
- Google Search Console:ブランド検索の増加を確認できます
- Twitter Analytics / Facebook Insights:SNSでの拡散状況が把握できます
- メディアモニタリングツール:Meltwater や PR TIMES分析ツール などで掲載状況を追跡できます
まずは無料ツールから始めて、徐々に有料ツールも検討するのがおすすめです。私も最初はExcelで手動集計していましたが、今では専用ツールを活用しています。
PDCAサイク
PDCAサイクルを回すことも重要です。PR戦略は一度設定して終わりではなく、常に改善し続ける必要があります。
私のクライアントでは、以下のサイクルを毎月回しています:
- Plan(計画):今月の目標と施策を明確に設定
- Do(実行):プレスリリース配信やSNS投稿などの施策実施
- Check(評価):数値データで効果測定、何が効いたか分析
- Action(改善):次月の計画に反映
ある教育系スタートアップでは、最初の3ヶ月間は反応が薄かったのですが、毎月のPDCAで「保護者」から「教育現場の先生」にターゲットを変更したところ、反応が3倍に増えました。
PDCAを回す際の注意点は「小さな成功体験を積み重ねる」こと。完璧を求めず、少しずつ改善していく姿勢が大切です。私自身も最初の頃は失敗ばかりでしたが、小さな成功を積み重ねて今の知見につながっています。
まとめ:起業初期のPR戦略は、事業成功への不可欠な投資
スタートアップの成功確率を高めるPR戦略。これは「あったら良いもの」ではなく「なければ成功できないもの」です。
私がサポートしてきた多くのスタートアップで共通していたのは、優れた製品やサービスを持ちながらも、それを世に知らしめる術を持たなかったことで苦戦していた点です。PRはマーケティングの一部ではなく、事業成長の基盤なのです。
今すぐ始められる3つのこと
PR戦略をゼロから構築するのは大変ですが、まずは以下の3ステップから始めましょう:
1. 自社の強みと価値を1枚にまとめる
何が他社と違うのか?どんな顧客の課題を解決するのか?を明確に書き出します。A4用紙1枚に核となるメッセージを整理するだけでも、発信内容が明確になります。
2. ターゲット顧客を具体的に定義する
「30代・都市部在住・時間がない・健康に関心がある」といった具体的なペルソナを作成します。これがすべての発信の基準になります。
3. SNSアカウントを1つ開設し、週1投稿を始める
すべてのSNSを同時に始める必要はありません。ターゲットが最も使うプラットフォーム1つを選び、週1回の発信を3ヶ月続けてみましょう。小さな一歩からすべては始まります。
専門家の助けを借りる
PR戦略は「専門性」と「継続性」が重要です。自分だけで悩まず、以下のリソースも活用しましょう:
- PR TIMES:プレスリリース配信サービス
- Hubspot:無料のマーケティングツール
- PR Newscanal:PR戦略の情報サイト
- 創業手帳:起業初期の情報サイト
PR会社やコンサルタントの力を借りることも検討価値があります。最初は数時間のコンサルティングから始めるのもおすすめです。
最後に:小さな成功体験が大きな成果を生む
PR戦略に「これさえやれば成功」という魔法の杖はありません。小さな施策を積み重ね、PDCAを回し続けることが唯一の道です。
私が支援したあるフードデリバリースタートアップは、最初は地元の小さな新聞1紙に掲載されただけでした。でもその経験を元に、より良いストーリーを練り、次は地方TV、そして全国メディアと徐々にステップアップしていきました。
今日から始められることは何でもいいのです。小さな一歩を踏み出し、そこから学び、改善を続けることが、PR戦略成功の秘訣です。
あなたにしか語れないストーリーがあります。それを伝える喜びを、ぜひ体験してください。
よくある質問のQ&A
Q: PR戦略は費用がかかるイメージがありますが、予算ゼロでもできることはありますか?
A: はい、十分可能です。SNSでの情報発信、メディア向けの情報提供メール、ブログ記事作成、プレスリリース自作などは費用をかけずに始められます。私自身も最初の1年間は予算ゼロでPR活動をしていました。
Q: どのようなPR手法が最も効果的ですか?
A: ターゲットと目的によって異なります。BtoB商材ならLinkedInと専門メディア、若年層向けならInstagramやTikTok、信頼構築が必要ならメディア掲載というように、最適解は変わります。まずは1〜2つの手法を深堀りすることをおすすめします。
Q: 成功事例から何を学べますか?
A: 「何を」伝えるかより「どう」伝えるかの重要性です。ユニコーン企業も最初は小さなスタートアップでした。彼らの共通点は「機能」より「価値」を伝え、「会社視点」ではなく「顧客視点」で語っていたことです。
Q: メディアに取り上げてもらうコツはありますか?
A: 記者が求めているのは「読者に届けるべき価値ある情報」です。自社の素晴らしさを語るより、「この情報が読者にどう役立つか」を考えることが大切です。また、記者との関係構築は一朝一夕にはできないので、情報提供を継続的に行い、信頼を積み重ねていきましょう。
PR戦略を「やらなきゃいけないこと」から「やりたいこと」に変えると、すべてが変わります。あなたのビジネスには必ず語るべきストーリーがあるはずです。それを見つけ、伝え、共感を広げていく旅を、今日から始めてみませんか?
迷ったときは小さく始める。そして継続する。それがPR戦略成功の王道です。ぜひチャレンジしてみてください!